終末期ケア(ターミナルケア)に関わる介護職員、看護師、その他の職員が、終末期ケア、ターミナルケアの専門性を高め、事例や課題を共有する勉強会を行うことには非常に高い意義があります。終末期、ターミナルケアを共創科学的にとらえていこうとするCTC(共創的ターミナルケア指導者)の有資格者ネットワークでは、「共創的ターミナルケア勉強会(Seminar)」を開催しています。CTC(共創的ターミナルケア指導者)の資格を取得した後に、有資格者ネットワークを通じて、この勉強会に参加することができます。
あなたが直面した様々な課題や事例、言葉にできない葛藤などを持ち寄り、あなたの心と頭の整理をしてみることが大切でしょう。
ケアの科学の諸理論では、人間という存在を「依存性」「脆弱性」「相互性」といった特性を持つものとして前提することが多いです。そのため、「ケア」は「サービス」と類似した性質を持つが、「ケア」と「サービス」は人間に対する認識が全く異なっています。ケアの実践は、関わる人間(ケア職員、利用者・患者、家族等周辺者)間の関係性と各自の倫理の共創と実践であり、サービスよりも複雑な現象です。
特に、キャロル・ギリガン(Carol Gilligan)やネル・ノディングス(Nel Noddings)のケア倫理では、「相手のニーズに敏感に反応し、情緒的なつながりの中で信頼関係を築く」ことが重視されています。終末期ケア・ターミナルケアにおいても、こうした関係性の倫理が重要であり、職員の内省的な態度や倫理的感受性を育てる機会を設けることが求められ、そのマネジメントが重要性を持っている。
また、パトリシア・ベナー(Patricia Sawyer Benner)の「実践知モデル」では、熟達する看護師とは、マニュアル的な知識だけでなく、現場での経験を通して獲得される「状況の全体性を直観的に理解する力」に長けた人間であると定義されています。終末期ケア・ターミナルケアのように「正解がひとつでないケア」の代表的なケアの場面では、このような暗黙知や共有知が不可欠です。この暗黙知をいかに共有するべきか、暗黙知を形式知にしていくことが医学をはじめ、多くのケア科学では指向してきましたが、知識科学では「暗黙知を暗黙知として共有する」というモデルも提示されています。暗黙知の共有をいかにマネジメントできるか、勉強会を通じて実践的科学の進歩を期待される部分です。
終末期ケアでは、以下のような多面的な課題が浮かび上がります。
こうした問題に対処するには、個々の専門職の孤立した対応では限界があります。相互に経験や事例を共有し、学び合う「学習共同体」としての勉強会の構築が重要です。
勉強会は、単なる情報共有の場ではなく、以下のような多層的な機能を担う必要があります。
| 専門職に 求められる機能 |
身につく 知識・スキル |
目的と内容 |
|---|---|---|
| 臨床知の共有 | 看取り事例の発表とグループ討議 | ナラティブ分析、ラウンドテーブルのマネジメント |
| 倫理判断の検討 | 延命治療中止の判断プロセス | 倫理カンファレンス、ACP勉強会のマネジメント |
| セルフケア支援 | スタッフのグリーフの言語化 | 分かち合いの会、詩や手紙の紹介のマネジメント |
| 専門知のアップデート | 新しい緩和ケア技術の学習 | 医師・専門家の講義、資料配布のマネジメント |
| 多職種連携訓練 | チームでの意思決定訓練 | 事例に基づく模擬カンファレンス、思考スキーム共有のマネジメント |
終末期ケア・ターミナルケアにおいては、知識・技術・倫理・感情という複合的な要素が絡み合い、職員は常に高い対応力と内省力を求められます。そのような中で、定期的な勉強会は「学びの場」であると同時に、「語り」「悩み」「立ち止まる」ための大切な機会となります。
ケアの質を高めるとは、単に手技を上手くこなすことではなく、「いのちの尊厳」をめぐる実践の深まりを意味します。そのための土台として、職員間の共通理解と相互支援の文化を育む勉強会の存在は、これからの終末期ケアを支える重要な柱となるでしょう。
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