終末期ケア(ターミナルケア)に関わる勉強会の意義

―終末期ケア・ターミナルケアの専門性の展開における実践と暗黙知の共有―


終末期ケア(ターミナルケア)に関わる介護職員、看護師、その他の職員が、終末期ケア、ターミナルケアの専門性を高め、事例や課題を共有する勉強会を行うことには非常に高い意義があります。終末期、ターミナルケアを共創科学的にとらえていこうとするCTC(共創的ターミナルケア指導者)の有資格者ネットワークでは、「共創的ターミナルケア勉強会(Seminar)」を開催しています。CTC(共創的ターミナルケア指導者)の資格を取得した後に、有資格者ネットワークを通じて、この勉強会に参加することができます。

あなたが直面した様々な課題や事例、言葉にできない葛藤などを持ち寄り、あなたの心と頭の整理をしてみることが大切でしょう。




1.終末期ケア・ターミナルケアについての勉強会の必要性

1-1. ケア理論と終末期ケアの関係性

ケアの科学の諸理論では、人間という存在を「依存性」「脆弱性」「相互性」といった特性を持つものとして前提することが多いです。そのため、「ケア」は「サービス」と類似した性質を持つが、「ケア」と「サービス」は人間に対する認識が全く異なっています。ケアの実践は、関わる人間(ケア職員、利用者・患者、家族等周辺者)間の関係性と各自の倫理の共創と実践であり、サービスよりも複雑な現象です。

特に、キャロル・ギリガン(Carol Gilligan)やネル・ノディングス(Nel Noddings)のケア倫理では、「相手のニーズに敏感に反応し、情緒的なつながりの中で信頼関係を築く」ことが重視されています。終末期ケア・ターミナルケアにおいても、こうした関係性の倫理が重要であり、職員の内省的な態度や倫理的感受性を育てる機会を設けることが求められ、そのマネジメントが重要性を持っている。

また、パトリシア・ベナー(Patricia Sawyer Benner)の「実践知モデル」では、熟達する看護師とは、マニュアル的な知識だけでなく、現場での経験を通して獲得される「状況の全体性を直観的に理解する力」に長けた人間であると定義されています。終末期ケア・ターミナルケアのように「正解がひとつでないケア」の代表的なケアの場面では、このような暗黙知や共有知が不可欠です。この暗黙知をいかに共有するべきか、暗黙知を形式知にしていくことが医学をはじめ、多くのケア科学では指向してきましたが、知識科学では「暗黙知を暗黙知として共有する」というモデルも提示されています。暗黙知の共有をいかにマネジメントできるか、勉強会を通じて実践的科学の進歩を期待される部分です。

1-2. 終末期ケアの課題の複雑性

終末期ケアでは、以下のような多面的な課題が浮かび上がります。

  • 利用者本人の「死生観」への理解と尊重
  • 家族の葛藤や悲嘆への対応
  • 痛み・不安・スピリチュアルな苦痛の緩和
  • 医療的ケアの倫理判断(例:延命措置の中止、ACPの尊重)
  • 職員間のケアの方向性の不一致
  • 看取り後のスタッフの感情的疲労(グリーフケア)

こうした問題に対処するには、個々の専門職の孤立した対応では限界があります。相互に経験や事例を共有し、学び合う「学習共同体」としての勉強会の構築が重要です。




2.終末期ケアの勉強会に必要な機能

勉強会は、単なる情報共有の場ではなく、以下のような多層的な機能を担う必要があります。

2-1. 事例共有と臨床知の可視化

  • 日々のケア実践から得た具体的な事例を持ち寄り、それを「形式知化」する。
  • 判断の根拠、ジレンマ、感情の動きを含めた「ナラティブ」による共有が有効。
  • 他職種間の見解の相違や視点の違いを明らかにし、学びに転換。

2-2. 倫理的内省の促進

  • 価値観の違いや医療的判断が複雑に絡む場面で、内省と対話による検討が重要。
  • 延命治療、鎮静、意思決定支援、ACPなど倫理的判断を伴うケースに備える。

2-3. 感情労働のケア(セルフケア・ピアサポート)

  • 看取りや死別に関わる職員自身の悲嘆や疲弊に対応する。
  • 「ケアする者へのケア」を可能にする相互支援のしくみをつくる。
  • グリーフワークやリラクゼーションの要素を取り入れる。

2-4. 専門知の更新と政策的視野の獲得

  • 緩和ケア、ACP、認知症終末期対応、宗教・文化的背景への配慮といった最新知見の学習。
  • 地域包括ケア、医療・介護連携、看取りに関する制度改革の動向への理解。

2-5. 多職種連携の実践訓練

  • 看護師、介護職、MSW、宗教者、家族支援者などが横断的に連携する体験。
  • 実際の症例に基づくロールプレイや模擬ケースカンファレンスの導入。
  • 専門性の違いによる思考の差、そこから生じる軋轢や齟齬を緩和するための思考スキームの共有・展開。



3.共創的ターミナルケア勉強会(Seminar)で扱われるテーマ

共創的ターミナルケア勉強会(Seminar)で扱われるテーマ
専門職に
求められる機能
身につく
知識・スキル
目的と内容
臨床知の共有 看取り事例の発表とグループ討議 ナラティブ分析、ラウンドテーブルのマネジメント
倫理判断の検討 延命治療中止の判断プロセス 倫理カンファレンス、ACP勉強会のマネジメント
セルフケア支援 スタッフのグリーフの言語化 分かち合いの会、詩や手紙の紹介のマネジメント
専門知のアップデート 新しい緩和ケア技術の学習 医師・専門家の講義、資料配布のマネジメント
多職種連携訓練 チームでの意思決定訓練 事例に基づく模擬カンファレンス、思考スキーム共有のマネジメント




4.おわりに

終末期ケア・ターミナルケアにおいては、知識・技術・倫理・感情という複合的な要素が絡み合い、職員は常に高い対応力と内省力を求められます。そのような中で、定期的な勉強会は「学びの場」であると同時に、「語り」「悩み」「立ち止まる」ための大切な機会となります。

ケアの質を高めるとは、単に手技を上手くこなすことではなく、「いのちの尊厳」をめぐる実践の深まりを意味します。そのための土台として、職員間の共通理解と相互支援の文化を育む勉強会の存在は、これからの終末期ケアを支える重要な柱となるでしょう。


4.お問合せ

お問合せは 一般社団法人知識環境研究会[教育会]までご連絡ください。

一般社団法人知識環境研究会[教育会]
〒101-0044 東京都千代田区鍛冶町2-11-22
電子メール:info@ackk.or.jp
TEL:03-3252-2472
FAX:03-6779-4703

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