調査研究報告

外国人介護職と一緒に働いたことのある人とない人、意識はどう違うのか
~「多文化協働」を担う介護福祉士養成の必要性~

平成30年3月8日

一般社団法人知識環境研究会


1.調査概要

一般社団法人知識環境研究会は、介護職を対象に行った、外国人介護職に対する意識調査の結果を取りまとめた。本調査は知識環境研究会が実施する研修の受講者および調査協力者(主に介護現場のリーダー層)103名を対象に2017年3月から2017年12月まで実施し、回答は調査票で回収した。


2.調査結果

結果、調査対象者の中で「外国人の同僚がいる」と答えた人は約3割であった(図1)。出身国について言及している回答の中では、ベトナム、ブラジル、中国、フィリピンがあった。現状、外国人介護職は少数であるが、技能実習生制度が運用される前から一定の割合を占めていることが推測される。

外国人介護職の同僚がいる割合
(図1)外国人介護職の同僚がいる割合

さらに、外国人介護職に対する期待と不安を尋ね、その結果を「外国人介護職の同僚がいる群」と「外国人介護職の同僚がいない群」で比較したところ、統計的に有意な違いがみられたのは、「外国人介護職が持つ新しい視点への期待」に関する意識であった。外国人介護職の同僚がいる群の方が、外国人介護職の同僚がいない群よりも介護に及ぼす異文化の影響を肯定的に捉えているということがわかった(図2)。(P値0.046、5%有意)

このことから、外国人技能実習生受け入れ前の「懸念」が、実際にともに働く経験をすることで、「期待」に変わるのではないかと考えられる。

外国人同僚がいる群といない群の「外国人介護職が持つ新しい視点への期待感」
(図2)「外国人介護職が持つ新しい視点への期待感」の外国人同僚がいる群といない群の比較

本調査とは別に、異なる被験者(リーダー層の介護職)を対象としたヒアリング調査を行った。その調査でも同様の結果を得ており、外国人介護職の同僚がいる場合、外国人介護職が持つ「異文化の視点」を介護現場への刺激という肯定的なとらえ方をする傾向がある。


3.示唆

日本国内における介護需要の増加が予測される中、介護資源の量的な拡大を様々な方向から検討している。外国人技能実習生制度もその一つである。外国人技能実習生制度が有効な施策であるかは議論が分かれているが、喫緊の課題に対応するための即効的効果を期待するものである。

本調査から、外国人介護職の受け入れ前には懸念される言語や文化のネガティブな側面も、適切な受入環境やサポート体制の整備によってポジティブな側面からとらえられるようになることが想定される。外国人介護職が持つ異なる文化的背景の問題は、受け入れ施設側の環境整備・サポート体制があるによって「リスク」ではなく、ケア現場への「新しい刺激」や「価値」へと転化させることができるだろう。

知識環境研究会が平成28年に実施した調査「介護職の思考傾向と日本の介護人材マネジメントの展望」では、介護職は看護職に比べて思考スキームの多様な組み合わせが観察された。今後、外国人介護職の受け入れが進むことで、介護現場の思考スキームは更に多様になることが予想される。そのため、思考スキームの共有を促し、ケアの質を向上させる思考スキームを創造していくことができる介護リーダーの存在が、今後より一層重要な役割を担うであろう。

つまり、「多職種連携」のみならず「多文化協働」をもマネジメントの対象として取り入れなければならない日本の介護現場において、介護リーダーは外国人介護職がもたらす文化の多様性を肯定的な価値へと転換することができるマネジメント力が求められる。

知識環境研究会では、介護福祉士教育を担う教員を養成する「実務者研修教員講習会」(通信コース)を開講している。この教員講習会は、全国を対象に、介護のリーダー層(介護福祉士)を育成するための教員を養成するプログラムである。今後も調査を重ね、得られた示唆を「多職種連携」のみならず「多文化協働」を視野に入れた次世代の介護リーダーの養成教育に生かす所存である。

通信で学び 模擬授業で鍛える
実務者研修教員講習会


4.お問合せ

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